とうせんぼう

 諫早市と大村市との市境に近い山間部の有機農場「とうせんぼう(藤川房)」は、共にリタイアー後に知り合ったスローライフの達人藤川氏の名前の音読みから名付けられたもの、木立に囲まれたログハウスを母屋とする山の中の広大な自然有機農園です。

 オーナーの藤川さんは、養鶏や山羊、フランス鴨などの家畜のほか、養蜂、果樹、野菜、椎茸栽培などをされています。私たち家族にとっては、そのような生活が羨ましく、お友達になり一年を通していろんな季節の実りを収穫させています。また、平飼いと自ら作られる有機飼料や野菜で育てられている鶏の自然有精卵と日本ミツバチの蜂蜜などを安価で譲ってもらっています。

 秋の終わりと言えば、干し柿用の渋柿の収穫があります。柿の木だけでも10本以上はあり、いくら採っても採り切れません。藤川さんから、”もうそろそろ採らないと、熟れ過ぎて鳥に食べられてしまうよ”と連絡が入り、慌てて恒例となった渋柿採りをさせてもらいました。それからついでに今季初めて収穫させてもらった「むかご(自然薯)」採り、大きな自然薯の”実”がいっぱいぶら下がっていました。通常、自然のムカゴを見つけるのは素人には難しいと言われますが、さすがに藤川さんにかかると意図も簡単でした。木に覆い被さるように絡んだ枯れた“ツル”を探し、そのツルの途中に生った黒い実を見つけると、その下に傘を逆にさし棒でツルをたたくという簡単なやり方でした。ムカゴは、実は種の入った果実ではなく、茎の一部が肥大化して実のようなもので、地面に落ちるとそこから再び成長するというツル植物だそうです。また一つ勉強になりました。自然とのふれあいを通じて先人たちの生活の知恵を今になって思い知らされています。

 今日では、自然の恵みを季節毎にいただくという知恵はなくなり、季節や旬は関係なく安定した収穫高を確保できる経済効率を優先する季節や天候に左右されない食材の工業化が進んでいます。本来、私たちの食材は自然の恵をいただいたから、“命をいただきます”と、言われた筈だと思っています。

 「とうせんぼう」では、このような屁理屈とは関係ありません。リタイアーした同世代の私たちとして、山の中の自然の中で懐かしを感じながら先人の知恵を今になって知り、そのことに安らぎと安堵を覚え、何と言ってもその楽しさに時間を忘れてしまいます。そんな至福な時間が流れている貴重な場所になっています。