「殿の山ファーム」のオーナーK山氏永眠

殿の山ファームからの西方の落日(台風接近中)
殿の山ファームからの西方の落日(台風接近中)

 諫早市には、三つの海(有明海、大村湾、橘湾)があります。その一つ飯盛町の橘湾に、小高い突き出た岬があります。眼下には結ノ浜を見下ろし、パノラマの橘湾に浮かぶ熊本から天草を遠望するその岬のてっぺんに「殿の山ファーム」があります。そのファームのオーナーK山さんが、16日20時20分永眠されました。

 K山さんは、私と同じ団塊の世代の一つ先輩にあたり、企業戦士としてサラリーマン勤めをされ退職金でこの岬を取得され、5000本という木を自ら伐採して農園に拓かれたと聞いています。そして、約10年間ここに一人で住み込んで大地を耕し夢の実現に向けて有機農園を実践されてきました。今では懐かしい日本古来から伝わる農家の生活の知恵などを研究習得され、有機野菜のほか果樹園、家畜、養鶏、養蜂など、有機肥料作りや家畜の飼料作りまでスローライフを実践されていました。

 私たち家族は、「殿の山ファーム」開園三年目後の頃、そのような生き方をされているK山さんと知り合い、貸し農園を借りたりや果樹の里親になったりいろいろな作物の収穫をさせてもらったり、イベントのお手伝いをさせていただくなど、大変お世話になってきました。我が家にとっては、特に息子の一土にはいろいろな体験と楽しい想い出をたくさん残してもらいました。

 

 今春の或る日、スローライフの共通の知人F川さんからK山さんのことを聞き、すぐ連絡を入れたら検査入院中で明日退院の予定だということでした。その際、“明日、主治医より家族と一緒に詳しい結果を正式に説明を受けます”ということでしたが、すでに「膵臓癌」であることを宣告されたとのことでした。氏としては、これまでも全く自覚症状もなく、糖尿病の再検査くらいの気持ちだったらしく本当に他人事のようでした。私はびっくりして言葉が出ませんでしたが、ご本人としては多分半信半疑で実感が湧かず、笑いながら“吉田さんの方が早い、と思ってましたがね。吉田さんには、まだ小さい一土くんがいますからね、元気に長生きしないと…”と苦笑いされながらいつもの感じでした。翌日早速お見舞いに行ったのですが、やはり普段と変わらない畑仕事の準備のことなどを心配される姿に、私と家内はお見舞いという感じになれずどのように接して良いのか戸惑いを覚えてしまいました。しかしながら、氏の心中は決して穏やかではないことは察することができました。

 私たち人間の生命には限りあることは分かっていますが、その後先については不運にも運命的に迎えるしかありません。そして、そのことを周りも受け入れるしかありません。今春駆けつけた時は、本当にご命日という日が今年中に来るなどとは到底実感が持てず、未だに元気のままのK山さんの豪快な姿しか思い浮かびません。

 その後の或る日、K山さんに“病気であることは、どうされるんですか?”と尋ねると、“そのままオープンにします”と、潔く一言でした。氏は、その後の殿の山の様子などをフェイスブックにアップされこれまで通りでした。私には、それらの写真を通して氏のガッチリとした体格が段々と細くなっていく様子が伝わり、敢えて皆さんにこうして伝えいるんだなあと感じて見ておりました。そして、しばらくの間そんなフェイスブックを通じてのやり取りをさせてもらっていたのですが、突然氏のアップがピタリと止みました。私は嫌な予感がし、私と家内は“いよいよ、来るべき時が来たか”と、膵臓癌の恐ろしさを実感するとともに数日後息子を連れてお見舞いに駆けつけました。

 

 11月10日の午前中、息子の休みとじいちゃんのデイサービスによる留守中にK山さんの枕元に行きました。氏は、少し横向きになって点滴を受け眼を閉じられたままでした。看病のため住み込まれていた娘さんによると、まだ意識はあるとのこと。一週間前までは、まだしっかりとされていたとの写真を飾られていました。その写真は、親子仲良くカメラ目線の笑顔の写真でした。

 私たち親子は、枕元に行かせてもらい、“吉田ですよ、息子も連れ家族で来ましたよ”と声をかけました。すると、眼を開けられ息子を見て少し笑みを浮かべられ“お〜っ”と、息子の大きくなった様子を見られて驚きの声を出されました。その時のK山さんの眼は白目が黄色く肌の色も黄疸が進み、握った手はガッチリとした逞しさは残っていましたが浮腫んでいました。そして、別れる時に“辛いですね。また来ますから失礼します”と告げると、意識が遠のきそうで話を交わすことはできませんでしたが、うなづかれたようでした。

 お正月生まれの、大変おめでたい日本全国がお祝いする昭和21年に生を受けられ、71歳という生涯を終えられました。私には羨ましい、潔い晩年を楽しく貫かれたのではないかと感じます。

 謹んでご冥府をお祈りいたします。

スローライフ殿の山https://www.jiyujinmac2008.jp/slow-life/